恋なんてミステリアス
 真理恵は病室に入ることは無く、廊下の長椅子で家族が来るのを待つことにした。時々、思い出したかのように男は病室から出てきては真理恵の横に座り、思い出話を聞かせてくれた。 真理恵は、じっと聞いた。男は、区切りの良いところまで話すと、少しは落ち着くのか、また病室に戻っていく行動を何回か繰り返した。
 夕方が近くなると両親と妹と思われる三人が看護師の後ろについて慌てた様子で駆け寄ってきた。男は暫くすると病室から出て真理恵に「ありがとうございました」と頭を下げた。真理恵は、何か困ったらまた、と言って連絡先を交換して病室を後にした。
< 33 / 36 >

この作品をシェア

pagetop