恋なんてミステリアス
 私は、千夏が開けてしまう時間を待てなかった。 「本当につまらないものよ。ただの本の詰め合わせだから」
 千夏は、ムッとした表情で言った。 
「なんで先にいうかなあ」 私は笑いながら受け流した。 
「あ、助かった。暇で暇で凍死しそうだったんだよ。これで時間を有効活用出来るってもんだ」
「何が有効活用よ。ただのマンガ本じゃないの」
 私は以前、千夏の部屋に遊びに行った際、余りにも大量の本が棚に並んでいることに驚いた事があった。そこで初めて、千夏がマンガにハマっている事を知り、それに似たような別のマンガを今日、探して来た訳である。ともかく、千夏が喜んでくれたことは有り難い。
「じやあ、これは真理恵が帰った後に読むか」
「それって、私に早く帰れって聞こえるんだけど」
 今度は、千夏が笑って受け流した。 
「それより、真理恵。彼とはどうなの?結婚まで行きそう?」
 いきなり何を。私は、どう答えようか悩んだ。嘘は言いたくないが、だからと言って今更あいつの事を話題にしたい気分では無い。「まさか、上手く行ってないんじゃ?」       もたもたする私に業を煮やしたのか、千夏は私の様子を察すると、聞かないではおれないという勢いで直球を投げてきた。 
「あんたねえ、少しはオブラートに包む技を身につけなさいよ」
 私は、何とかしてこの場を凌ごうと必死になった。
< 6 / 36 >

この作品をシェア

pagetop