クールな彼が好きすぎて困るんですが!!
どす曇った低い声に、情けなくも手が震える。
伊吹先輩はまるで別人のような……鋭く睨み付ける瞳をあたしに向け、けれど口元は弧を描いていた。
その顔は、不気味すぎて………。
「柚希ちゃんは悪い子だなぁ。せっかくこっちが下手に出てあげたのに、そんな事言うんだぁ?」
「…い…ぶき…先輩?」
「分っかんないかなー?アンタ聖の気持ち知ってんでしょ?なのに私と聖の邪魔するんだ?」
「……っ」
伊吹先輩が、一歩、また一歩と近付いて来る。
あまりの人の変わりように、怖くて声が出ない。
伊吹先輩は、山田くんの伊吹先輩に対する気持ちを知ってるの?
だから、こんな言い方をするの?
「柚希ちゃーん?難しく考えなくていいの。
どっちが聖にとって良いのか、考えるだけよ?
それくらいなら、いくらアナタの無い脳みそでも判断出来るわよねぇ?」
……どちらが、山田くんにとって良いのか……?
あたしが諦めて、伊吹先輩と上手くいくのと。
あたしが諦めなくて、伊吹先輩との仲を邪魔するのと。
……どちらが……?