クールな彼が好きすぎて困るんですが!!
ゆっくりと目を反らすあたしに、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「伊吹先輩、この人は?」
「ん?あぁ、お友達の柚希ちゃん」
「えっ!?柚希って……“あの”立本柚希さんですか!?」
「え?“あの”って?」
やたら興奮する彼女に、あたしは伊吹先輩の背中から横にずれて尋ねた。
「山田先輩を狙ってるっていう、立本柚希さん!うちの部ではかなり有名なんですけど……あれ、違いました?」
いえ、全くその通りです。
別名山田くん信者の立本柚希です。
「そ、そうですね」
「やっぱりー!わぁ~っ本物初めて見たぁ~っ!」
「え、えへへ。どーも」
キラキラの瞳を向ける彼女に照れていたら、どこからか『えっ!?あの立本柚希!?』という声が聞こえてきた。
そしてあっという間に、あたしは全部員に周りを取り囲まれていた。
「へーっ!これが噂の!」
「初めて見たわ!」
「案外小さいんだな~」
ちょ、そこ聞こえてるぞ!
「立本柚希さ~ん、山田先輩は落とせましたか~?」
と、騒がしい声の中にそんな質問が飛んで。
瞬間、一斉に静かになるみんな。
「え?えっ?えっ?」
「まだですかぁ~?」
「え?えっと…も、もう付き合ってますけど……」
『……えぇっ!!!!?』
え?な、なに!?そんなに驚くこと?
綺麗にハモって驚いた声を出すみんなのあまりに大きな声に、あたしはビクッと肩を震わせた。