クールな彼が好きすぎて困るんですが!!
ビックリしてバクバク鳴ってる胸に手を当て、深呼吸してるあたしの耳に届いた部員の言葉。
「…でも、山田先輩彼女いるなんて言ってなかったよな」
「だよな。聞いたことねぇ」
「じゃあこの人が言ってるのは嘘?」
「えぇっ?いくら何でもそれは…」
……なに、それ……。
伊吹先輩は呆然とするあたしの隣で、慌てたように言った。
「ほ、ほら、その話はもうおしまい!みんな練習に戻って!」
伊吹先輩がほらほら、と促すと、部員たちは何か不服そうに練習に戻っていった。
あたしはその場で立ち尽くしながら、部員たちの言葉を思い出していた。
《彼女いるなんて言ってなかった》
《聞いたことない》
《嘘?》
頭の中をぐるぐるぐるぐる、噛み合わない歯車が回って目眩がする。
……何も、考えたくない。
「柚希ちゃん、気にしないでね?聖は恥ずかしがりやだから言ってなかっただけよ」
「……はい」
せっかくの伊吹先輩の励ましも、耳に入らなくて。
ショックだった。
別に、みんなの前であたしを彼女だって紹介してくれなくていい。
ただ、“立本柚希が彼女だ”くらい、言って欲しかった。
あたし、ワガママなのかな……。