クールな彼が好きすぎて困るんですが!!


―――――……

――――…

――…



―――ポタッ。




「んっ…?」



頬にひんやりとした感覚がして、ゆっくりと目を開けた。


あれ……いつの間にか寝ちゃってたんだ…。


ふぁ~っと大きくアクビをして、空に向かって両腕を伸ばした。


んーっと伸びをして、ハッとしたあたしは腕時計を見た。



――――10時57分。



……あれ?もうすぐ11時…?


記憶を辿る。
待ち合わせは、10時のはずだ。


慌てて立ち上がり辺りを見回すも、山田くんの姿は無くて。


……遅刻?


そう思ったけど、山田くんのことだ。遅刻なんてあり得ない。


だってぐーたらなあたしでさえ20分前に来ていたのに、あの真面目な山田くんが遅刻なんて…。



そこでハッとした。

………もしかして、事故……?



ゾクッと体中を悪寒が走った。

急いで携帯を取り出し、電話帳から山田くんの名前を探す。


大丈夫だよね?事故なんかじゃないよね?


祈るように言い聞かせながら、震える手で発信ボタンを押した。




《お掛けになった電話は、現在電波の届かない場所にあるか電源が入っていないため掛かりません》




耳に届いたのは山田くんの声ではなく、聞きたくない無機質な女性の声。


……繋がらない。


一気に不安が押し寄せる。


…でも、今たまたま出られないのかも。

たまたま、何か用事があるのかも。


誰にか分からない理屈を頭に並べ、もう一度発信ボタンを押した。



お願い…繋がって…お願い…。


そう願っても、現実は厳しくて。



《お掛けになった電話は、現在電波の届かない場所にあるか…》



……だめ、だ。繋がらない…。


何だかすごく怖くなった。まさか、本当に事故なんじゃないか。

その思いだけが頭を駆け巡る。


携帯を持つ手が震えて、視界がグニャリと歪み出す。



そして……そんなあたしと同じように、空がザアザアと泣き出した。


 
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