クールな彼が好きすぎて困るんですが!!


「きゃー!急に降ってきた!」


「最悪!早くあっち行こ!」



横を通った二人組の女の子達が、そう叫びながら走って屋根下へと向かって行った。


彼女達だけじゃなく、サラリーマンや主婦、学生など大勢の人が走り去っていく。



空から叩き付けるように降る雨。ほんと、まさに滝。

滝修行してるお坊さんとかこんな気分なのかな……なんて馬鹿なことを、冷静に考えてる自分が怖い。


とにかく、山田くんの家に行こう。


……そう、思ったけど。
あたし、山田くんの家を知らない。


住所だけじゃない。あたし、山田くんのこと何も知らない……。



その場に呆然と立ち尽くし、ただただ溜まってゆく水溜まりに写し出された自分とにらめっこしていた。


………どう、しよう。





―――――♪~♪♪~♪




「……っ!」



その時、うるさい雨音に紛れて聞こえた着信音。


ハッとして携帯のディスプレイを見れば、掻き消されそうな音を懸命に鳴らして光る【山田くん】の文字。



山田くん!?



急いで通話ボタンを押し、携帯を耳に当てた。



「もしもしっ!?」


『もしもし、柚希?』


「う、うんっ」



山田くんだ…。ちゃんと、この声は山田くんだ…。


ホッとしたと同時に、涙が溢れて。

ぽろぽろと零れるそれを乱暴に拭う。



「山田くんどうしたの!?何かあった!?」


『…いや、それがさ…』



言葉に詰まる山田くんに、首を傾げたあたしはすぐに後悔した。



























『…香里奈と、偶然会って。今一緒にいる』


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