クールな彼が好きすぎて困るんですが!!
「…山田くんがどうかしたの?」
「いや、朝から調子悪くて。普段だったら滅多に的外さないのに、今日はむしろ外す方が多くてさ」
難しい表情で話す松川くんに、あたしは胸がぎゅっと痛くなった。
「理由聞いても教えてくれなくて。大丈夫だって言うけど、弓道は人の精神が矢として現れる競技だ。誰が見たって、今日の山田は心に迷いがあるって分かるんだ」
相変わらず意地っ張り。
そう言って、松川くんはハハッと笑った。
その笑顔に、少しだけ場が和らぐ。
「でも、そっか。立本とケンカしてたのか」
「…ケンカ、って言うより、一方的にあたしが怒っちゃったんだけど…」
「はぁ?お前、そんなんでうちのエース動揺させんなよ。知らねぇの?」
「え?」
「山田が部で立本のこと紹介しない理由。こうしていざこざが起こって、お前が嫌な思いしないためだよ」
「え……?」
そうだったの……?
「でも、香里奈か。アイツは根っからの山田ファンだからな」
………え?
サラッと発せられた名前に、松川くんを見つめて首を傾げた。
それは多分、美喜ちゃんも同じはず。
「何で香里奈ちゃんって分かるの?」
「弓道部内では立本と同じくらい有名だぜ?山田目当てに入ったマネ、ってな」
「そうなの!?」
「うん。多分、それを知らないのは当の本人の山田だけ。アイツ鈍いからなぁ~」
って松川くん、笑い事ではないのでは…?
もうすっかり山田くんと仲が戻ったのか、松川くんの表情は緩んでいる。