クールな彼が好きすぎて困るんですが!!
黙り込むあたしに、香里奈ちゃんの高笑いが聞こえた。
「あはははっ!もう皆の中じゃ山田先輩と柚希さんは別れたことになってますよ?」
「…え…?」
「だって、わたしが噂流しましたから。今さら弓道場に行って、何を言うつもりですか?好奇の目を浴びるだけですよ?」
「――――…っ」
瞬間、あたしは体中の力が抜けた。
……悔しい。悔しい。悔しい。
何で、どうして、あたしは……っ。
「言い返せませんか?弱いですね。…ま、こんなバカな人好きな山田先輩なんて気持ち悪いし、わたしは万々歳ですけど」
「――――――」
―――――パンッ
静寂の空間に、乾いた音が響いた。
右手がジンジンと痺れる感覚と、目の前には乱れた髪に顔を隠した香里奈ちゃんの姿。
しばらくの間の後、左頬を押さえてゆっくりとこちらを見た香里奈ちゃんの瞳は、怒りに震えていた。