クールな彼が好きすぎて困るんですが!!


ビンタなんて、人に初めてくらわした。


だって、だって、許せなかった。

気付いたら、手が、動いてた。



「…何、するんですか…っ!」


「許せない!!」



鬼のように目を吊り上げ、反論しようとした香里奈ちゃんに大声を張り上げた。


ビクッと肩を揺らした香里奈ちゃんを見つめ、あたしは下唇を強く噛んだ。



「あたしのことは何て言ってもいい!好きなだけ馬鹿にすればいい!でも、だけど、山田くんだけは馬鹿にしないでっっ…!!!!」


「……っ!!」



許せなかった。許せなかった。許せなかった。

どうして山田くんまで馬鹿にされなきゃいけないの。

誰に権利があってそんなこと言うの。


腹立たしかった。

何よりも、あたしが原因で山田くんが馬鹿にされたことが。




「…ッ、偉そうなこと言わないでよ!!」


「っ!」



香里奈ちゃんの腕が大きく振り上げられ、そのまま勢い良く下ろされた。


来る痛みにギュッと目を瞑り、呼吸を止めた瞬間だった。



「おい!立本何してんだよ!!」


「……っ!」



その時、香里奈ちゃんの後方から響いた大きな声。

寸止めで、あたしはぶたれずにすんだ。


ゆっくりと目を開けると、俯く香里奈ちゃんとこちらに走って来る松川くんの姿が見えた。



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