クールな彼が好きすぎて困るんですが!!


「松川くん!」


「お前何してんだよこんなとこで。何で来ないんだよ」


「えっ?えっと…」


「まぁいいやそれより早く来い。山田が苦戦してる」


「え…っ?」


「矢がささくれててんのに気付かないで思いっきり射っちまって。手の平切ったんだよ」


「うそ…っ!?」



手の平を切った…!?


驚いたのはあたしだけじゃないらしく、横で聞いていた香里奈ちゃんも目を見開いて顔を上げた。



「けっこう深く切れたんだけど、山田絶対止めなくて。何か、不甲斐ない自分と闘ってるように見えたけど」


「…うそ…」



と、呟いたのは香里奈ちゃんで。

あたしは最後まで聞かずに、その場を走り出していた。


急いで渡り廊下を駆け抜け、弓道場に飛び込んだ。



「山田くん…っ!」



勢いだけで開けた扉は、静寂な空間に鈍い音を響かせて閉じた。


一斉に中にいた人達の視線が注がれる中、あたしは乱れた息を整えながら必死に姿を探した。



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