クールな彼が好きすぎて困るんですが！！

足を止め、ゆっくりと振り返った六花ちゃんは驚いた表情で俺を見つめる。



「…松川くん？」


「……行かないで、欲しいんだけど」


「…え…？」



また、気付けば口から勝手に溢れていた言葉。


何だよそれ。って、ツッコんでる自分と。

そうなんだ。って、納得してる自分と。


二人の自分が、心の中で存在してる。


六花ちゃんは状況がわからないのか、少し困惑した表情を浮かべる。



「えっと…」


「…そいつのとこ、行くの？」


「……え？」


「…その手紙の相手のとこ」



ダメだ。今の俺、最高にカッコ悪い。

まだ気持ちが不透明なままのくせして、こうして心のままに動いて六花ちゃんを困らせている。


好きじゃないなら、こんなことしない方がいいのはわかってる。

六花ちゃんに迷惑をかけるだけだって、分かってるけど、でも……。



「…行くなよ」


「……え？」


「…行かないで欲しい」


「…松川く…」


「…立本が山田といるより、六花ちゃんが他の男の所に行く方が嫌なんだよ」



……あぁ、バカすぎる。

自分がバカすぎて、泣けてくる。


何言ってんだよ。訳わかんねぇよ。メチャクチャだろ。


自分がここまでバカで、どうしようもなくて、しょうもない男だとは思わなかった。