クールな彼が好きすぎて困るんですが!!
「その子、聖が好きで。わかってたんですけどダメ元で…って。そしたら、見事フラれちゃいました」
「…そんな…」
いくら聖が好きでも、要くんの気持ちくらい信じてあげればよかったのに。
女の子の扱いに慣れてるからって、真剣に恋しない訳じゃないのに……。
「…だから、思ったんです。もういっそのこと、友達って言ってしまえば、その距離を作れば、信じてもらえなくても辛くないんじゃないかって」
「…要くん…」
「…そのために、親友を好きな子は好きにならないって決めました。結局、俺は自分を守りたいだけだったんですよね」
………って、ん?
しんみりしてるとこ悪いけど、今ものすごく気になった。
「親友“の”好きな子は好きにならないじゃないの?」
「え?違いますよ。親友“を”好きな子は好きにならない、です」
な、何だそれ………。
あり得ない。あり得ないよ要くん。
まさかの私の聞き間違い?聞き間違いで、私はずっと悩んでたってこと?
私の今までの我慢はなんだったのよ…。
あれ?でも、そうだとしても、私は聖のことを好きだったわけで…その条件、当てはまっちゃうんじゃない?
「要くん、私だって最近まで聖が好きだったのよ?なのになんで…」
「俺が先輩を好きになったのは、先輩が聖にフラれてからですよ。球技大会の後です」
あぁ、なるほど。それなら確かに、私は聖にフラれた時点で吹っ切れていたし、“親友を好きな子”ではないわね。
そう納得していると。
「…と、いうことにしてください」
なんて、少し観念したように、でも少し困ったように笑うから。
「…ふふっ、えぇ。わかったわ」
私は笑って、気づいてないフリをしてあげた。
人の気持ちだもの。
自分ではどうにもならない事もあるわよね。
「…?」
「…フフッ」
ふたりして真っ赤な顔してる。
そのことが何だかおかしくて、つい笑ってしまったら要くんが不思議そうに首を傾げていた。
気付けばもう辺りは夕焼けに染まっていて、大きな窓のある踊り場には夕陽がキラキラと差し込んでいた。
しゃがみ込む私たちの影は、ずいぶん小さく床に伸びているけれど。
「…要くん」
「はい?」
………ほら、二つ重なれば大きくなった。
ーsideスミレ*endー