クールな彼が好きすぎて困るんですが!!
彼が渡したのは全部で1500円。
こうしてお釣りの練習もするのか…。
少しぎこちなくも何とかレジを打ち終わり、お釣りを彼に手渡す。
「150円のお返しになります」
「はい」
お釣りを受け取った彼が、背を向けて出口へと向かっていく。
その背中を見て、彼の言葉を思い出した。
“ありがとうございましたー!って元気良くね”
「ありがとうございましたーっ!」
お腹にいっぱい空気を吸い込んで、笑顔とともに声を張り上げる。
足を止めて振り返った彼は笑顔で、
「また来ますねー!」
と言って外へ出て行ってしまった。
え、あれ。帰っちゃった?
私の様子どうだったんだろう。オーケーかな?
なんて考えていると、後ろから肩をポンッと叩かれた。
「お疲れさま。上出来だったよー」
「あ、三橋さん!帰っちゃったかと思いました」
「まさか。言ったじゃん、“また来ますねー”って」
あ、あれそういう意味だったの?
てっきりお客さんとしての言葉だと思って、喜んでしまったよ。
実際にああ言われたら、スゴく嬉しいんだろうなぁ……。
「…あ、でも美喜ちゃんに向けて言った言葉でもあるよ」
「え?」
「さっきのありがとうございましたは、お客さんを気持ち良く送り出せる。つい俺みたいに、また来ますーって言っちゃうんじゃないかな」
それくらいちゃんと心の込もった挨拶だった。
そう言って、彼は私の頭をクシャクシャと撫でた。
ドキンッと心臓が高鳴って、急激に顔が熱くなる。
嬉しくて恥ずかしくて、しばらく顔が上げられなかった。