Level 36.

「女将さん、綺麗な方ですね。
 話し方も所作も、微笑みも……。
 全て揃っている大人の女性、って感じ」

「あ? あぁ……、そうだな」



 ロックグラスについた水滴を指で弄びながら
 ぼんやり思っていた事が悠希の口からこぼれていた。


 悠希を見つめている柴田の瞳は細められ
 熱を含んだように熱いものを感じる。


 まるで女将を想っているかのようなその表情に
 胸のざわつきがさっきからちっとも治まらない。



 ―――今日の私はなんだか変だ。



 初めて連れて来られた店に落ち着かないだけではなく
 胸の底を何かで掻き雑ぜられているようだ。


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