Level 36.

「篠原さん。僕はね、
 クリニックは地域の方の駆け込み寺だと考えているんだ」



 静かに話し始めた柴田に悠希が顔を上げ
 か弱く瞬き澄んだ瞳が見つめる。



「様々な症状や不安を抱えている人、
 何科に行けばいいのかわからずにここに来る人、
 日課的にリハビリに通っている患者さんも沢山いる。
 これからもっと在宅介護も増えていくだろうし
 患者本人だけではなくその背景、ご家族との係わりも重要になってくる。

 新卒だろうとベテランだろうと患者にとって関係ない事はわかっているね?」

「はい」



 悠希は控えめに、だがしっかりと頷いた。


 この瞳を育ててみたいと言えば大袈裟だが
 いい看護師になるのではないかと期待せずにはいられなかった。


 幸い今のスタッフは優秀で教育に向いている者もいる。
 今回の人事募集は欠員ではなく増員だ。


 何とかなる、か?


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