Level 36.
あの頃の悠希を思い出しながら
目の前にいる悠希を見つめる柴田の口元が緩んだ。
―――ふと、
箸を止めた悠希が顔を上げて、視線が絡む。
柴田の箸が進んでいない事に気付いた悠希は
不思議そうに首を傾げている。
「ホント、お前はいつも美味そうに食うな」
「えっ? だって、美味しいですから……」
いや、そういう意味じゃないんだけど。とは言葉にせず
悠希の皿から薑を取ってパクっとかじった。
「あっ!」
「いつも俺に負けるな」
今食べようと思ってたのに……。と毎回恨めしそうに睨まれる。
取り立てて好きという訳でもないが、悠希のこの顔を見たさに
つい、小学生のような悪戯心が顔を出すのだ。
悠希と食事して帰る事が増えてから
柴田は一人の食事が日に日に味気ないものに感じている。
本当なら毎日でもいい位だと思ってはいても
そうも出来ない状況の自分に半ば苛立ちさえ覚え始めていた。