Level 36.
2.
柴田は先を歩いて目的らしいお店に入って行く。
看板は見当たらない。
くぐった暖簾に小さく『藤原』とだけ書いてあった。
『一見さんお断り』な雰囲気を醸し出している高級そうなお店を前にして
戦闘モードに突入するように意味もなく深呼吸をした。
暖簾をくぐって数メートルの敷石を歩き、引き戸を開けた途端
今まで見たこともないような明るい表情をしている柴田の横顔。
その先には柔らかい女性の声。
柴田においでと手招きされて跨いだ敷居の先で
和服が似合う綺麗な女性が出迎えている。
高級そうな割烹に入る緊張が飛ぶ程
鬼柴田がこんな表情をしている事に驚いた。