Level 36.
看板も上がっていないような高級割烹の暖簾をくぐり
鬼柴田の意外な一面に驚き
悠希の両頬は引きつりそうにぎこちない笑顔が張り付いている。
女将の気さくな語りかけに少し和まされながら
案内されたのは個室?
四畳半程の広さに座卓と座椅子、床の間には掛け軸。
そして、綺麗な華が活けられた一輪挿し。
(えっと、えっと…。 どっちが下座だっけ……)
なんて思いながら、柴田をちらっと横目で見る。
「篠原」
とだけ言い
『あちらにどうぞ』と言うように掌を奥の席へ向けている。
(あっちは上座だよね…?でも鬼院長が言ってるからいいのかな……)
自問自答しながら粗相のないように慎重に
サンダルのストラップに指を掛けた。