夏に、恋をした。


「してねぇの?」

「はい」


手に持っていたスポーツドリンクのキャップをしめながら、頷く。




「本当に?」




先輩が射抜くように言った。


「……っ」

思い浮かぶ顔がないわけではない。


ただ、



「恋かは、わからないです」



素直に言ってみる。

この先輩は、テニス部のたらしなのだ。


「わからない、ねぇ」


< 63 / 258 >

この作品をシェア

pagetop