桜並木の下で  上 ~四月から九月~




 ま、人それぞれだよね。


 やめる理由なんて。


「放課後、寮に戻って何してるの?」

「ん、大したことじゃねえぞ。奏が俺らの部屋に来てよ、三人でカラオケ」



 奏…日野原奏(ひのはら かなで)。三人組の中で唯一メガネかけてるんだよ。



 大人しそうなのに、チャラいんだ。



「おもしろそうだね」

「まあな。けっこう楽しいぜ」



 そのとき、教室のドアが開いた。



「遠山勇太。このクラスのホームルーム担任だ」


 まだ、けっこう若いんじゃない?

 多分、二十代前半かなあ。


「皆、名前の読みがあってるかを確認するよ。名前を呼ばれたら、返事して」








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