桜並木の下で  上 ~四月から九月~



「あ、ありがと…」



 まさか、始業式の日に、私が大っ嫌いって認識した奴に、ストラップを拾われるとは。


 最悪だー。


 私は、差し出されたストラップを受け取った。


「奈美、俺に惚れんなよ。恋愛なんて、ダルいから」


 はぁ?

「誰が、アンタなんかに…!絶対に、惚れないんだから!」


 気のせいかな…。

 一瞬、翼の顔が、歪んで見えた。


 …うん、多分、気のせいだろう。


 第一、ああいうチャラい奴ってのは、冗談をこよなく愛してるんだし。





< 20 / 93 >

この作品をシェア

pagetop