先輩の愛で溶けちゃう -夏休み短編-
「10回練習したら、呼びに来い」
速水先輩はドS顔でそう言って、隣の部屋へと行ってしまった。
「先輩、かっこいい」
大きめの独り言。
私は練習しながら、いろんなことを考えた。
あのまま、引越ししなかったら私達はどうなっていたんだろう。
とか……
速水先輩は彼女いるのかな。
とか。
私のこと、どう思ってるんだろうとか。
余計なことばっかり考えて集中できなかった。
速水先輩に関するうわさはたくさんありまして。
どれもうわさだから真相はわからないけど。
他校に美人の彼女がいるだとか。
高校生の年上の彼女がいるだとか。
どれも本当のように思えるけど、多分本当じゃない。
速水先輩は、不器用な人だと思う。
今、吹奏楽部に全力を注いでいる。
恋愛とか、そんなことにうつつを抜かしている暇はないんじゃないかと。
勝手にそう思って、安心したりしているんだけど。