先輩の愛で溶けちゃう -夏休み短編-
「速水先輩は彼女いないんですか?」
「気持ち悪い敬語やめれって。バカ!」
そしてそして、私の手を握ったのです。
「彼女いるわけないじゃん。俺、ずっとみいのこと好きなんだから」
ミーンミンミン
セミさん、私どうしましょう。
倒れちゃう。
一生分の幸せを全部使っちゃったんじゃないでしょうか。
「気付いてないとでも思った?お前がこの中学に入ってくることくらい俺はわかってた」
ええええええ~!
あれは演技だったの?
私のこと最初から思い出してくれてたんだ。
「小学校の時、こっそりみいのこと見に行ったんだよ、俺。でも、お前は近所の子供達を楽しそうに遊んでた。俺がいなくても楽しそうだったから、もう声はかけなかった」
違うよ。
ずっと寂しかった。
ずっとずっと長い間、心の中で太一兄ちゃんを呼んでいた。
太一兄ちゃんがいないと、不安だった。
守ってくれる人がいなくなっちゃったから。