先輩の愛で溶けちゃう -夏休み短編-
「お前、別れたくないなら、本気で頑張れ。このままじゃ優勝できねーぞ」
優勝しなかったら別れる。
それが、私達のお付き合いの条件なのです。
「絶対優勝します!頑張ります」
私は胸を張ってそう言ったものの、自信はなかった。
自分のミスで演奏が乱れることもあったし、部員の心がひとつになっていない気がした。
「お前だけが頑張っても仕方がない。2年の部員をまとめるのはお前の仕事だから」
「へ?」
アホ面で見上げた私のおでこに、冷たいペットボトルを乗せる。
「信じてるからな、みいのこと」
甘い甘い笑顔と、甘い声で。
溶けちゃいますって、私。
それからというものは、私は猛練習の日々でした。
2年の部員を集めてミーティングを繰り返し、目標を書いた紙を部室に貼ったり、できることは全部やろうと思った。
それは、速水先輩と別れたくないからじゃない。
速水先輩の最後の夏を、最高の形で終わらせてあげたいと思ったから。
去年は3位。おととしは2位。
今年こそ!!と3年の先輩は意気込んでいた。
私達が足を引っ張ることは絶対にしちゃいけないんだ。