先輩の愛で溶けちゃう -夏休み短編-
先輩の愛
―先輩の愛―
涙が止まらなかった。
部員みんなでお祭りを少し見て回った後、学校へ向かう。
部室の許可を取ってくれていた速水先輩は、ひとりでトランペットを吹いていた。
その音色を廊下から聞いて、また涙が溢れた。
堂々とした音。
立ち姿。
真っ直ぐな目。
大好き。
「よ!」
私に気付くと、速水先輩はトランペットを置いた。
「こっち、おいで」
と手招きして。
「ちょっと、肩貸して」
そう言って。
夕日の眩しい部室で。
涙を流した。
寂しいね。
辛いね。
さよならは悲しいね。
ずっとここで一緒に演奏していたかった。
先輩、部活が大好きだもんね。
速水先輩は、私に涙を見せずに泣いた。
私は何も言わず、ただ自分の涙を我慢していた。