神様修行はじめます!
その人は中年の女性だった。

丈の長い、裾を引きずる着物を着ている。

ゆっくり、そして堂々とした足取りで、真っ直ぐこちらに歩いてくる。


・・・けっこうな美人だ。


一重で、ちょっと釣り目気味だけど、いわゆる日本美人。


白いお白粉と、口元の紅い紅。

和風なお化粧がとても良く似合っている。

不思議な形に結い上げた、真っ黒で艶やかな髪。


着物もすっごく豪華で鮮やか!

どんな織り方をしてるのか、生地全体が細かく輝いて見える。

 
なんか、見るからに偉い身分っぽい人!


そして後ろには付き人らしき男の人を従えていた。

・・・たぶん、男の人だと思う。

体全体を覆い隠すような、ダボッとした格好をしているせいで体格もよく分からないし。

それに、お面を付けているから。


そのお面を見た時、あたしは、なぜか寒気がした。


白い狐のお面。

細い、すっと伸び上がった墨の両目。

ヒゲの部分だけが紅く染まっている。


その紅さが奇妙に目を引いて・・・。

なんだか・・・


不思議、というよりも・・・


そう、不気味。


ぞくっとするような雰囲気を持っている人だった。
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