神様修行はじめます!
「永久よ」
少し離れた場所にいたお母さんの声が聞こえた。
こちらに背中を向けたまま立ち止まっている。
あたしの手首を握る門川君の手が、ぴくんっと震えた。
「永久」
「・・・はい。母上」
「わらわに逆らうか?」
「・・・・・」
「答えよ」
「母上・・・」
「この母に逆らうのか? 永久よ」
静かな、淡々とした口調だった。
上品で綺麗な声。
貴婦人の、たおやかな後姿。
でも・・・
この人は完全に威圧している。
間違いなく彼を上から見下ろし、押さえつけて、思うがままにしようとしている。
そしてそれを当然だと思って疑ってもいない。
あれは、そういう声だ。
門川君は唇を噛み締めている。
辛そうな、苦悩の表情。
彼のこんな顔初めて見た。
それでもあたしの手を離そうとはしないけれど・・・。
この人達は・・・この親子は、いったい?