神様修行はじめます!
「どんな影響が及ぶか分からぬ状況じゃ」

「・・・・・は」

「今は、門川全土を守るのが最優先じゃ」

「し、しかし! それでは・・・!」

「今回の件、おそらく全て永久が原因であろう」


華子は手に持った扇子を広げ、顔を覆う。


「その永久を救うために、門川を危機にさらすわけにはいかぬ」

「ですが奥方様!」

「洞窟の周囲を結界で封じ込めよ」

「お、奥方様っ!」

「門川を背負う者には、辛く、重い責任があるのじゃ」


扇子の奥の声に哀愁が漂う。


「わらわとて永久が可愛い。だが我が子可愛さに、責任を放棄するわけにはいかぬ」


扇子とそれを持つ手が、さも悲しげに震える。



「そうでございましょう?・・・・・ねぇ、当主様」



しん・・・

と、静まり返る。

誰一人、何も言わなかった。



華子はパチンと扇子を閉じる。

そして永世に一礼し、立ち上がり、そのまま座敷から出て行った。

眉ひとつ動かさない無表情のままで。


やがて・・・

座敷内は、完全に諦めと収束の空気に占領された。



皆が永世に深く一礼し、次々と出て行く。



座敷内は誰もいなくなった。

ただひとり・・・

永世をのぞいて。
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