神様修行はじめます!
彼は背筋をピンと伸ばした綺麗な姿勢で、まっすぐに廊下を歩いていく。

その背中を真美と二人でなんとなく見送った。


「里緒、大丈夫だった?」

「うん大丈夫。だけどさ、なに? あいつってば!」

「? なにってなにが?」

「人にぶつかっといて、『湿気』ってなによ! 湿気って!」


そりゃ汗かいてて髪の毛が湿気てたかもしんないけど。

暑いんだからお互い様でしょー!

この温度じゃ汗くらい普通にかくでしょ!

・・・。

あ、そーいやアイツ、汗かいてなかったっけ。


「・・・里緒、それって本気で言ってる?」

「なにがよ?」

プンっとふくれたあたしの顔を見ながら、真美が笑いを含んだ声で説明した。


「湿気じゃなくて『しっけい』。失礼しましたって意味なの」


あ・・・そうなの。

しっけいって言ってたの? よく聞こえなかった。

それに、しっけいなんて言葉、知らないもん。
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