君の隣で夢みた未来
少し短くなった煙草を咥えて、缶コーヒーのプルタブを開けてそれを口へ運ぶ彼女。


コクリと喉に流し込み、柔らかい声で言う。



「進路は迷うよね」


「つんちゃんも迷った?」


「…そりゃぁね。仕方なしの今だし」



仕方なしの今。


そう呟く彼女はやっぱりどこか寂しげだった。



「ピアノに未練はあるの?」



この言葉に彼女は俯いてしまった。


それが答えなのだろうか?



「まぁ…ないと言ったら嘘になるかな」


「そっか」


「出来ることなら嫌いになりたいな。ピアノ」



夏の始まりといえども、風は少しだけ冷たい。


春先の風とは違い、心地よくも感じる。


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