君の隣で夢みた未来
どのくらいの時間が経ったのだろう。


彼女は額を離し、小さく息を吐いた。



「ありがとう」



そう言って、ベンチへと戻った。


カバンの中に入っている携帯を取り出し少し弄っている。


大きな画面を指先で撫でて操作をしているようだった。



「けーすけ。おいで」



彼女は俺を呼ぶ。


呼ばれた俺は、彼女のすぐ隣に座る。


彼女の手のひらの上にある携帯の画面は、あいつの電話番号などが映し出されていた。


あいつの隣で笑う彼女の写真も一緒に。



「見てて」



彼女はそう言って、携帯の画面を指で撫でた。


画面には



【このメモリを削除しますか?】



と映し出されていた。


彼女なりの恋の終わらせ方なのだろう。



< 111 / 496 >

この作品をシェア

pagetop