君の隣で夢みた未来
私と凛さんはヘアメイク室が混む前に着替えて、そこへ向かった。


年功序列でトップバッターは凛さんから。


凛さんはとてもよく笑う人で、営業中だけではなくスタッフともよく声を上げてお喋りをしている。


尊敬しているお姉さんだった。


凛さんがヘアメイクをしている間に、私は慣れないつけまつげとか普段のメイクから少しだけ色を足す作業に入っていた。


ピンクのチークを少し濃いめに乗せて艶感のあるフェイスパウダーを乗せてキラキラ感を出す。


目頭にもラメパウダーを乗せる。


そこに凛さんに教えてもらった落ちにくいルージュも唇に乗せる。


いつも学校では見せない顔の私。


圭介にも見せたことがない私。



「ありがとう。つばさちゃんお先」



私は凛さんからもらった笑顔を返すように、微笑み返す。


鏡の前に座り、ヘアメイクの人に「お願いします」と鏡越しに軽く頭を下げた。


髪型はいつもお任せ。


ぐりぐりに巻くこともあるしアップもよくする。


女の子の中にはこだわりがある子もいるみたいだけど、私はお任せしてしまう。



「つばさちゃん、今日もお任せにする?」


「はい」


「今日アイロンしてきたんだ?綺麗~」



彼はそう言って髪を巻くこともなく髪を丁寧に編みこんでいく。



「ストレートを生かして、ハーフアップにしようか。高さは出さずに髪の毛でコサージュっぽくするね」



仕上がりを想像しやすいように言葉をかけてくれる。


正直なんだってよかったけど、この人は女の子が一番似合う髪型を提案してくれる。


自分じゃ出来ないアレンジを仕事中にできるのは夜の仕事の特権かも知れない。


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