君の隣で夢みた未来
時折、少し大きな手で髪を撫でてくれていることが少し嬉しかった。


私の居場所はここなんだ。


そんな錯覚に陥りそうになる。


圭介は私を現実の世界からひと時の夢の世界へいざなってくれるのかもしれない。


だけど、夢は所詮…夢。


いつか、醒めてしまう。


現実へと戻らなきゃいけない。


私は歌い終わった後、体を起こし冷めたマグカップに手を伸ばし煙草に火をつける。


圭介は再びマイクを持ち新たに入れた曲を歌いはじめる。


その曲は圭介の大好きなラブバラード。


今はいない恋人への愛を歌う。


圭介がそれを歌うから、私は嫌でも純のことを思い出してしまう。


…なんだか意地悪だ。


純のこと思い出したくないのに。


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