君の隣で夢みた未来
楽しみなはずの夏休みなのに、あたしと先輩の頭の中は苦しいことが渦巻いているようだった。


電車に揺られながら先輩は携帯をいじる。


きっとメールでも来たんだろう。



「美咲さんですか?」



何も考えずに出た言葉だった。


あたしは、その言葉を言ったと同時に何故か『まずい』と思ってしまった。


帰り道に話した話題の所為かな?


だけど、先輩はそんなことを気にせずに笑顔を携帯に向かって見せていた。



「正解」



美咲さんとメールをする先輩も、先輩にメールを送る美咲さんもあたしには羨ましかった。


やっぱり、美咲さんはあたしも憧れる女性だから。



「いいなぁ~…美咲さんとメールしたり遊んだり」



あたしはそう言って少し頬を膨らました。


あたしの表情を見た先輩は笑いながらあたしの膨れた頬を人差し指で軽く押す。


あたしの頬に溜まっていた空気は変な音をたてながら口から出て行った。


その様子がなんだか可笑しくてあたしたちは声を出して笑った。



「今度、ちびちゃんも来るかい?」


「え?」



何を言われたのか瞬時に理解することが出来なかった。



「美咲さんに会いたいんでしょ?だったら、美咲さんに伝えておくよ」


「本当ですか?」



軽い口約束かも知れない、いつ実現するかもわからない約束だけど、なんだか凄く嬉しい。


美咲さんに会えるのは勿論、夏休みに先輩に会えるかもしれない。


そんな些細な約束が凄く嬉しかった。





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