君の隣で夢みた未来
私より半歩前を歩きながら担任であった彼は思い出したかのように言う。



「お前、ピアノ続けてるのか?」


「あ…うん。暇な時にぽろろんって弾く程度」


「そっか」



今は3時間目の途中かな?


廊下を歩く生徒は居ない。


緑の多い母校、廊下は冷房をつけずに所々窓を開けている。


その所為か、ジリリと蝉の声が廊下に良く響く。



「まだ、授業中だから教室以外はぶらぶらしてていいぞ」


「音楽室は?」


「使ってなかったら。たぶん、今の時間使ってないはずだし」


「はぁい。ピアノは昼休みになってからの方がいいよね?」


「そうだな。うん。それで頼む」



彼はそう言って、事務室に戻ろうとした時、「職員室、顔出しとけよ」と言って私達は別れた。


そんなこと言われなくたって…。


私は気付かれないように小さく'ぷぅ'とむくれた。


< 31 / 496 >

この作品をシェア

pagetop