君の隣で夢みた未来
だけど、今の自分も充分に子供だった。


それに気付かされたのは、天敵である生活指導の言葉だった。



「美咲さん!よく来てくれたわね~。ちょっと見ない間に綺麗になって…」



今までに見た事ない優しい顔をしていた。


当時なら、完全にアウトなのにね。




「お久しぶりです」



私は深々と頭を下げて、職員室を見渡した。


今、この時間に職員室にいるのは授業のない少数の先生だけ。



「今ね、小花先生、音楽準備室で資料作ってるから…少し奥で待ってて?」



まるで親戚の子が来たのをはしゃいで出迎える叔母に見える生活指導の彼女が愛くるしく思えた。


私は奥の来客スペースに通されて、ブラウンのソファに腰を落とした。



「アイスティーとアイスコーヒーと麦茶、どれがいい?」



パテーションからひょこりと顔を出して飲み物を訪ねる。


元生徒が訪れることがそんなに嬉しいのか。


彼女の笑顔とテンションの高さに私の表情から緊張が落ちていくのがわかった。



「…ふふ。お構いなく」


「あら。あなたもそんな事言うようになったのね」


「気付かない間に二十歳になりましたから」


「二十歳…。月日の流れは速いわね~」



私も先生も少し懐かしんでいるようだった。


彼女は「思い出話は飲み物持ってきてからにしましょうかね」と言い、ぱたぱたと忙しなく準備をしていた。







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