君の隣で夢みた未来
「ちょっと待ってて」



美咲さんはそう言って、走ってどこかへ行った。


あたしと先輩、二人きりにして。



「綺麗だったね。花火」


「そうですね」


「本当に元気ないね?大丈夫?」


「はい…」



先輩と二人きりで嬉しいはずなのに、なんだか寂しい。


先輩はいつか二人で帰った時みたいに夜空を見上げる。



「…さっきまででっかい花火があったんだよなぁ~」



もの悲しげに先輩は呟く。



「俺、やっぱり花火って好きじゃないや」



…花火大会来たくなかったのかな。



「…なんか、無理やり来てもらっちゃってすみません」



あたしは頭を軽く下げた。


きっと、今のあたしブスだ。


可愛げなんてどこにもない。


先輩は何か続きを言おうとしたけど、あたしはそれを遮り言った。



「今日はありがとうございました。美咲さんにもよろしくお伝えください」


「え?」


「駅、すぐそこなんで大丈夫です。ありがとうございます」



あたしは、少し痛みを感じながらぴょこぴょこと足を引いてその場から立ち去った。


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