君の隣で夢みた未来
行きの自転車はあんなにも笑顔が絶えなかったのに、今は何も浮かばない。


どんな話をすればいいのか。


どうしたら笑うのか。


考えるのすら面倒くさくなってきた。


そもそも、なんで俺が、この子の為に必死に話題を作らなくちゃならないんだ。


そんな時だった。



「…先輩…」



微かに聞こえたか細い声。


俺は小さく「ん?」と聞き返す。



「ここで、大丈夫です」


「え?」


「…ここからだったら近いので歩いて帰れます」


「そう?」


「はい…」



俺は自転車を止めて、「気を付けて帰るんだよ」とだけ言ってペダルを蹴った。


一漕ぎでグンと進む自転車。


背中に突き刺さる視線。


俺が消えるまで見送らなくていいよ。


さっさと背を向けてくれ。


俺は、君が望む答えなんか出せないんだから…。




いっそうの事嫌いになってくれ。



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