君の隣で夢みた未来
それからの車内は『高校生の美咲さん』の話で持ちきりだった。


提供者は勿論、先輩。



「美咲さんはね、今じゃ考えられないくらい先生に反抗してたよね。本当、当時1年の俺は正直怖かったっす」


「なんかさ、よく解らないんだけど、嫌だったんだよね。校則に締め付けられるのが。今考えると、まぁ、あんな小さなことでバトってたなって思うけどね」


「えー?そんなに厳しかったんですか?今じゃ全然だよね?実子」



あたしはコクリと頷いた。


うちの学校は校則は緩いほうだった。


まぁ、幾つかの校則は生徒手帳に書いてあるけど、よっぽどの事がなければ咎められない。



「多分、きっと…不安定だったのかな…」



呟くように言う美咲さんの表情が少し見えた。


一瞬、ほんの一瞬だけ凄く儚げな表情をしたように思えた。



「まぁ、隣にもっと不安定なヤツいるけどねー」


「え?俺?」


「他に誰が?」



なんだか二人のリズムのいいやり取りが面白くて思わず笑ってしまった。


いつも学校にいるときとは違う、別の顔を持った先輩がそこに居たような気がした。


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