キミの前に夕焼け
2人とも傘をさしていると、普通に歩いている時よりも距離が空く。
傘の分だけの距離も、もどかしいくらい好き。
いつだって、あたしは颯くんといて落ち着いたりはしないんだ。
ドキドキする、心臓がうるさい。
この心臓の音は、雨が隠してくれる。
「えっと…何買うんだっけ…」
「小麦粉と、卵と、生クリームと……」
桃から渡されたメモを見ながら答えた颯くん。
当たり前みたいにカゴを持ってくれる颯くん。
「フルーツって何買うの?」
「イチゴとかバナナとか?」
「ふぅん…やっぱり一応料理部だな」
「い、一応……」
「ははっ」