キミの前に夕焼け
「桜華」
ザワザワしている体育館なのに、クリアに聞こえる声。
ボールを片手で持った颯くん。
あたしの横にいる先生に気付いてちょっと慌ててる。
「君もすまなかった。
うちのチームの完敗だったな」
少し驚いた表情の颯くんは、笑って
「いいっすよ。
何言われても、桜華を諦めるつもりはなかったし」
と言った。
じゃあ、失礼します。
そう言って体育館を出たあたし達。
「あー…、暑」
体育館を出た瞬間に吹き付けた北風には、似合わなすぎる言葉だ。
「桜華、手ぇ冷たい」
そう言って触れた颯くんの温かい手が、あたしの体温を上げる。
手が触れてるだけで、恥ずかしくて熱くなる。
「そうだ。学校案内してよ」
「えっ、いいけど……」
「けど?」
「……あたし、方向音痴です…」
「ははっ、そんな感じ」
「え!?そんな感じ!?」