キミの前に夕焼け



「い、いいけど…」



なんで?と聞くと、少し目を背ける颯くん。




「高いところ、苦手っていうか……」





小さな声に、思わずクスッと笑ってしまった。



「かわいいですね」


「…全然嬉しくないです」




外を見ないようにしながら隣に座った颯くんに、ドキッと心臓が跳ねる。





触れる肩に、ドキドキして。

ちらりと盗み見た横顔に、キュンとして。

怖いのに、乗ってくれたんだって思ったら、幸せになった。






「大丈夫……?」


「んー、ダメ」


「ど、どうしたらいい……?」




と、ニヤリと口角を上げた颯くん。





「キスしてくれたら怖くなくなるかも」






「え!?」





ほら、してよ。

なんて言いながら意地悪に笑う。



そんな表情も好きだなんて、悔しい。





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