キミの前に夕焼け




「そろそろ帰るかー!」





結局その後は何も言えずに、私は先に席まで戻って。

そしてレンレンのその一言で、今日は解散になった。




「桜華、一緒に帰ろ」




そう言って差し出してくれる颯くんの手を握って、ふたりで歩く。


颯くんはやっぱりいつもより上の空で。

何か言おうと思っても、なんて言っていいかわからなくて。



きっと颯くんのことだから、私に心配かけるようなことはしないから。

だから、1人で抱え込んでしまうんじゃないかって。




「颯くん、私、話し聞くくらいならいつでもするからね!」





無理に話させるのも違うと思って、帰り際にそう言うと。


驚いてから、ありがとう、って笑う。


その表情は、びっくりするくらい、水樹くんと似ていた。




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