キミの前に夕焼け
『ーーーはい』
少し掠れた声に、桜華です、と答えれば、驚いた声が聞こえる。
「……あの、風邪引いたって聞いて。
親とかいないなら、もし良かったらお粥とかー…」
『あー、ありがとう。
今開けるね』
階段を降りる音がして、ガチャリと開いたドア。
「あれ、ひとり?」
「みんな、部活終わったら来るって…」
「そっか……桜華ちゃんも無理しなくていいよ、俺は大丈夫だから」
そう言って笑う水樹くんは、この前みたいに寂しそうで、なんだか泣きそうで。
そんな顔させてるのはあたしなのかもしれないって思ったら、どうしようもなく胸が痛んだ。
「水樹くんが嫌じゃなかったら、お粥だけでも作らせてほしい」
「嫌とかじゃないけど……」
「それに、この前のことも謝りたいの」
そう言えば、分かった、と家にあげてくれた。