キミの前に夕焼け
「ご飯、もう食べた?」
「いや、何も…」
スウェット姿の水樹くんは、いつもよりラフで、なんだか逆に緊張する。
キッチン借りるね、と断ってからレトルトだけどお粥を作り始めた。
水樹くんは、キッチンから見えるリビングのソファに座っている。
「何か手伝うよ」
「病人なんだから寝てて!
ていうか、布団に入って!」
大丈夫だって、と言いはる水樹くんを強引にベッドに寝かせて、お粥を水樹くんの部屋まで届ける。
「はい、どうぞ」
「ん、ありがとう」
ベッドから起き上がってお粥をひとくち食べた水樹くんは、
「……美味しい」
って、優しく笑う。
……そんな嬉しそうな顔、するのずるい。
「レトルト、だよ」
「それでも美味しいよ。
人に作ってもらったご飯って、やっぱりあったかいね」
水樹くんは、この広い家でいつもひとりなんだろうか。
自分でご飯を作って、自分で食べて。
風邪を引いたときですら、ひとりで。
知らなかった水樹くんの一面に、俯く。
ごちそうさま、とお粥を全部食べきってくれた水樹くん。
その笑顔はどこか寂しそうだって、ずっと思ってたけど。
その理由が少し、分かったような気がした。