キミの前に夕焼け



「……ごめんね、すぐに言えなくて」



「水樹のこと考えて言わなかったんでしょ。


桜華のそういう優しいところ、好きだよ」




「っ……」





なんでそういう嬉しいこと、颯くんはさらっと言っちゃうんだろう。

赤くなったあたしを見て、また笑う。




「俺を選んでくれて、嬉しかった」




「へ?」


「いや、だって水樹、王子とか呼ばれてるし……

桜華が水樹に惚れたらどうしようって、思ったよ」





「あ、あたしは颯くんだけだよ!」




慌ててそう言ってから、恥ずかしいことを言ってしまったことにハッとする。


にやり、と笑った颯くんは、



「可愛すぎ」



ってあたしの頭をくしゃりと撫でた。





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