キミの前に夕焼け



いや、そんなのは今、水樹の話を聞いたからそう思うだけなのかもしれないけど。

俺はそんなに鋭い方じゃないけど。



だけど、桜華と話す水樹の笑顔は、いつもの王子とか呼ばれてる笑顔とはどこか違って。



切なげで、さびしそうで、でもとびっきり優しくて。

それに何か違和感があったのは、本当。






「ごめん、でも本当に、颯から奪いたいとかそういう気持ちは全くなくて…



……ずっと、颯に申し訳なかった」








そう言ってうつむく水樹の声は、少し震えてて。

水樹の手は、布団を強く握りしめて。



すごく、緊張してるのが伝わってきた。

それくらい誠実に、話そうとしてくれてることも。









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