キミの前に夕焼け



「絶対言わない!」


あはは、って皆で笑った。



ヨーヨーやわたあめを両手に、花火の見える場所へ行く。




「あ、始まった!」




真っ暗な夜空に散る花火は、一瞬で星すらも隠してしまう。




「綺麗…」



止まない花火を見上げていると、そっと触れた颯くんの手。



そのまま繋がれた手に驚いて颯くんを見ると、颯くんの口が小さく動いた。



言った言葉は花火にかき消されて聞こえない。



「何て言ったの?」


そう聞いても



「何でもない」


って笑うだけだった。





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