キミの前に夕焼け
「けっこう血が出てましたけど、大丈夫ですか…?」
「ああ、大丈夫。俺はこれくらい気にしないのに、みんなが見てて痛いから絆創膏貼ってこい、ってうるさいんですよ」
思わず笑ったら、笑い返してくれる。
男子とこんなに喋れたのは、珍しいかもしれない。
「あの、甘いものとか作ってました?」
いきなり聞かれてビックリした。
「エスパー…ですか?」
「あ、いや、さっき甘い匂いしたから…って、変なこと言ってすいません」
そうだよね、あたしのマカロンは失敗したけど材料の香りとかはするし。
「はい、料理部なんです…一応…」
「一応?」
「料理…下手で…」
「へぇ、食べてみたいかも」
え?
今の話聞いてたのかな?
「料理下手なんです!でも桃…友達はプロ級なので、そっち食べた方がいいですよ?」
あぁ、自分で言ってて情けない…。
もう会えないんだから、嘘でも得意って言えば良かったかな。
って、なんでこんなに色々考えてるんだろう?